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ガパオライスってどこの国の料理なの?
ガパオライスってどこの国の料理かご存知ですか?
ガパオライスは、タイ料理を元に日本独自にアレンジして作られた料理です。
厳密に言うと本格タイ料理ではありません。
例えていうならば、最近外国人観光客の影響で人気が出ている日式ラーメンみたいなものです。
ラーメンは中華料理が由来になっていることから、中華料理のジャンルにカテゴライズされることが多いです。
しかし、ラーメンは日本で独自の進化を遂げ、外国人観光客からは日式ラーメン(Japanese Style Ramen)と呼ばれるようになっています。
ガパオライスはそれと似た変化を遂げていると言って良いでしょう。
ここでは更にガパオライスってそもそも何なの?
ガパオライスの原型とどこがどう違うの?
など、ガパオライスについて少し詳しくなれるお話をまとめておきたいと思います。
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そもそもガパオライスとは?
ガパオライスとは、料理自体を説明すると「ひき肉バジル炒めと目玉焼きのごはんのせ」となります。
写真のような、ひき肉のバジル炒めをごはんに添えて目玉焼きが乗っている料理を見たことがある方が多いのでは。
日本でガパオライスという料理が認知され始めたのは、ここ10年程の間ではないかと思います。
いなばのとりそぼろバジルややまもりのガパオごはんなんかもスーパーで見かけるようになり徐々に一般的になってきました。
そもそもガパオライスと言い始めたのは一体誰なんだろう?そう思って調べてみましたが、信ぴょう性のある情報にたどり着けませんでした。
いろいろと調べていくうちに分かったことは、2013年、お弁当屋さんのほっともっとが毎年期間限定で「ガパオライス」というメニューを販売しはじめました。(タイランドハイパーリンクより)
それと同じくしてコンビニでも「ガパオライス」のお弁当が販売され始め認知度が高まって来たようです。
ガパオライスはタイの食堂では通じない?
日本のガパオライスの原型はタイ料理にあるパッガパオガイ(ผัดกระเพราหไก่/Pad Grapao Gai)です。
タイ語でパッガパオガイは「鶏肉のホーリーバジル炒め」を指します。
この言葉にはごはんと目玉焼きは含まれていません。
日本のガパオライスのようなスタイルである「鶏肉のホーリーバジル炒めと目玉焼きのせごはん」を正確に言うと、
パッガパオガイラートカオカイダーオ (ผัดกระเพราหไก่ราดข้าวไข่ดาว/Pad Grapao Gai Raat Khao Kaidao)と言います。
タイで食堂へ行くと「ガパオ(กระเพรา/Grapao)」だけでも通じなくはありません。
その際は「目玉焼きは要る?」と尋ねられることもあります。
タイ旅行で食堂に入り「ガパオライス」と注文してもタイ人には通じません。(日本人の先客に慣れている人には通じるかもしれませんが。)
なぜならば,
ガパオライスはガパオ(タイ語)+ライス(英語)
という日本人が作った造語だからです。
タイのローカル食堂で「Can I get a ガパオライス?」と言うと、タイ人の定員が「ハア?」と顔をしかめて言ってくるのが容易に想像できます。
メニューに写真がないお店で注文する時はご注意を。
日本のガパオライスは本格タイ料理ではない?その理由を解説
ガパオライスは日本人が作った造語で日本流にアレンジされたタイ料理。
その理由として日本のガパオライスの原型はパッガパオガイ(Pad Grapao Gai)であると先ほど申し上げましたが、この2つの料理には決定的に違う点が2つあります。
- 使用するバジルの種類が全く違う
- 使う調味料が違う
一つづつ解説していきます。
1.使用するバジルの種類が全然違う
実はガパオライスとパッガパオガイは使っているバジルが全然違います。
ガパオライス=スイートバジルを使う
パッガパオガイ=ホーリーバジルを使う
どっちもバジルだったらそんなに違いないでしょ?
と思う方もいるかもしれませんが、スイートバジルとホーリーバジルは見た目、味、香り全部が違います。
日本で手に入るスイートバジルの葉はこんな感じ。
葉の表面がつるっとしていて滑らか。
葉の形もシュッとしています。(関西弁)
一般的に家庭料理で使用する場合はイタリア料理に使うことが多いのではないでしょうか。
甘くて強い香りが特徴的。味は香りの強さに苦みが少し加わります。
そしてホーリーバジルはこんな感じ。
葉の表面は少しフカフカしていてマットなテクスチャ。
葉の形もギザギザしています。
香りはスイートバジルのような甘くて強い香りと比べると、さわやかな香りです。
味は苦みが少な目です。
そしてあさとが2つのバジルの違いを力説しているのには理由があります。
タイにはタイのスイートバジルがあるんです。
これはタイ語でホラパー(โหระพา/ Horapa)と言いますが、日本で手に入るスイートバジルと香り・味がよく似ています。
タイではパッガイガパオにホラパーは絶対に使いません。
ここまで説明してご理解いただけたかと思いますが、
日本のガパオライスは肝心のガパオ(ホーリーバジル)を使っていないんです。
タイ人からしてみれば「日本人が作っているガパオライスはホラパーライスである」ということになります。
なので日本のガパオライスはタイ人やタイ料理を知っている人からするととても違和感がある料理と言えます。
あくまで推測になりますが、タイで食べられるガパオを日本家庭でも簡単に作れるようにとレシピが考案された際、ホーリーバジルが日本のスーパーでは簡単に手に入らないものだったため代用品としてスイートバジルが選ばれた。
そして、日本人に認知されているガパオという名前はそのまま使用した。
ということではないかと思われます。
ちなみに、ほっともっとのガパオライスも最初の頃はホーリーバジルではなくスイートバジル系のバジルを使用しているようです。
ホットモットが販売していた最初の頃ガパオライスのチラシ
↓
その後、タイのガパオ炒めのソースを使って本場に近づけた味を提供するようになっています。
こちらのチラシにはホーリーバジルを使っていることがちゃんと書かれていますね。
2.使う調味料が違う
ガパオライスとパッガパオガイは調味料が違います。
まず、2つの料理のレシピで使用される調味料の比較対象を説明しておきます。
ガパオライスで使用されている調味料は、クックパッドで一番人気のガパオライスのレシピで使われている調味料を挙げてあります。
パッガパオガイで使用されている調味料は、私がタイ料理店で働いていた際にタイ人コックから教わったレシピで使用していた調味料です。
この2つを比較してみました。
ガパオライスの調味料 | パッガパオガイの調味料 |
にんにく ナンプラー オイスターソース 醤油 豆板醤 砂糖 胡椒 ごま油 |
にんにく 生唐辛子 オイスターソース シーズニングソース(タイの大豆由来のうまみソース) シーユーカオ(タイの薄口醤油) シーユーダム(タイの甘い醤油) 砂糖 鶏がらスープ |
改めて比較してみると全然違います。
オイスターソース、醤油、砂糖が入る点は共通していますがそれ以外は違っています。
ガパオライスには中華調味料である豆板醤が入るんですね。これは生唐辛子の代用ということでしょう。
ただ、胡椒やごま油を入れるのは完全に日本アレンジと言えます。
ここでタイ人シェフが作る場合のパッガパオガイの調味料を解説しておきます。
シーズニングソース:うまみの強い醤油とウスターソースの間のような味でタイ料理によく使われます。
シーユーカオ:日本語に訳すと白醤油。薄口醤油のような色で味は日本の醤油に比べて甘め。
シーユーダム:日本語に訳すと黒醤油。黒糖のような香りでトロッとした甘い醤油。料理の色付けに使われます。
ナンプラーはタイ人のコックによっては入れる場合もあるようですが、私がタイ料理を教わった3人のシェフのレシピにはナンプラーが入っていませんでした。
ゆえにナンプラーは必須ではありません。
以上のことから、ガパオライスとパッガパオガイの両者は、
- バジルの種類が違う。
- 使う調味料が違う。
ということで、味が違う似て非なる料理と言っても過言ではありません。
ガパオライスはタイ料理のパッガパオガイから派生した日本人独自の家庭料理と言っていいでしょう。
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タイ人にとってのパッガパオガイとは
タイ人にとってパッガパオガイは国民食のひとつと言えます。
タイのローカルなおかず食堂へ行けば必ずあります。
1日3食ガパオ食べてるよって言う人もいるくらいです。
日本で例えると牛丼のような存在です。
パッガパオガイと言えば、タイでは鶏ミンチではなく鶏肉を細かく切ったものを使うことが多い印象です。豚肉の場合はミンチが多く、エビやイカを使うメニューもあります。
タイの食堂で見かけるのは、パッガパオムー(豚肉のホーリーバジル炒め:ムーガパオとも言う)のほうが多いかもしれません。
目玉焼きは揚げ焼きでしっかり火の通った状態をタイ人は好みます。
また目玉焼きをのせずに食べたり、卵焼きと一緒に食べる人もいます。
ごはんとホーリーバジル炒めを一緒に混ぜて炒める、「ルワミット(混ぜる)」にしてくれという人もいます。
唐辛子を大量に入れて激辛にするのが好きな人も多いです。
プリックナンプラー(唐辛子・ナンプラー・レモン汁・味の素)をかけて食べるのが好きな人も多いです。
タイ人はパッガパオガイを注文する時、自分の好みをしっかり伝えて作ってもらいます。
タイ人にとってガパオはトムヤムクンより身近な料理と言えるかもしれません。
結論
ガパオライスはタイ料理をベースに日本で考えられた日本の家庭料理である。
ということで、どんな料理も自分の好みの合うようにアレンジすることは自由です。
日本の料理も世界中でアレンジされて、日本にはない料理が生まれています。
タイ料理は中国料理がベースになっている部分が多いとは言え、日本人がなじみのない味が多いのも事実です。
日本でもっともっとタイ料理への理解が深まって、本格的なタイ料理が日本人にも愛されるようになれば楽しいなと思います。